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クスリウコンの新規機能性物質
キサントリゾール
クスリウコンの概要はM&Kpediaクスリウコンを参照。
キサントリゾールXanthorrhizol
キサントリゾールは、クスリウコン(Curcuma xanthorrhiza)の根茎に含まれる特異的な植物機能性成分であり、クルクミンとともに主要な薬理作用を発揮する。
ビサボラン(Bisabolane)骨格をもつセスキテルペン(Sesquiterpene)。
原産国インドネシアのクスリウコン乾燥根茎粉末、アルコール抽出エキス粉末および精油の分析成績の一例を示す。
キサントリゾール | クルクミン | デメトキシ クルクミン | ビスデメトキシ クルクミン | |
クスリウコン粉末 | 2,043 | 997 | 162 | 検出限界以下 |
クスリウコンエキス粉末 | 607 | 11,952 | 2,337 | 417 |
クスリウコン精油 | 6,530 | — | — | — |
測定方法:HPLC-ESI-MS/MS
クスリウコン粉末のアルコール抽出によるキサントリゾールは約2%、クルクミンを含むクルクミノイド含量は1%以上の高濃度が確認されている。
一方、クスリウコン根茎のエキス粉末のクルクミノイドは約15%であるが、キサントリゾール濃度はクスリウコン粉末より少ない。
クスリウコンの水蒸気蒸留によるオイル中のキサントリゾール含量は6.5%であり、非常に多いことが確認されている。
クスリウコンの主成分であるキサントリゾールやクルクミンの含量には、地域差が確認されている。
また、試料の分析前処理によっても差がみられる。
クスリウコンは沖縄などでも栽培されるが、キサントリゾールやクルクミン含量が非常に少ないことが報告されている(1)。
クスリウコンの薬効
クスリウコンはインドネシア原産のショウガ科の植物であり、インドネシア伝承医薬品ジャムゥとして広く使用されている。
伝承医薬品ジャムゥでは、42の対象疾患があげられている。
欧州連合では、クスリウコンは1963年より植物原料由来の医薬品として認可されている(2)。
クスリウコンの医薬品原料としての定義では、精油は5mL/100g, クルクミンは1%以上とされている。
一般的なクスリウコンの剤型としてエキス粉末と乾燥材(あるいは粉末)であり、クルクミンの1日摂取量を60~70㎎としている。
適用として、
「クスリウコンの伝承的医薬品の使用は、満腹感、消化不良や鼓脹などの消化器系症状がある場合に」としている。
しかし、
「クスリウコンは、胆汁分泌の不全に伴う消化器系失調」への適用は、妥当かもしれないが証明に乏しい。」
「皮膚疾患への適用は、情報が不足している。」との理由から認可されていない。
キサントリゾールの薬効
キサントリゾールの薬理生理作用に関しての研究は多く、注目すべき薬効を列記します。
これらの詳細は、論文や総説等(3~12)を参照してください。
1抗菌作用
2抗かび作用
3にきび治療効果
4抗酸化作用
5抗腫瘍作用
6抗炎症作用
7抗糖尿病作用
8高血圧改善作用
9血小板凝集抑制作用
10肝臓機能防御作用
11脂肪肝抑制作用
11腎機能防御作用
12エストロゲン、抗エストローゲン作用
13膠原繊維分解酵素(MMP-1)抑制作用
キサントリゾールの特記すべき作用
1抗菌作用
キサントリゾールには広範囲スペクトルな抗菌作用が認められている。
虫歯、歯周炎やにきび治療への有用性が示唆されている。
* 虫歯、歯周炎、歯垢、菌膜の原因菌に対する抗菌作用
*グラム陽性、グラム陰性菌の抗菌作用
*にきび菌に対する抗菌作用
*カンジダ症(真菌・酵母 Candida albicans)に対する効果
*マラセチア感染症(Malassezia)
*糸状菌に対する抗菌作用
2ヒト乳がんへの効果
クスリウコンの主要な成分はクルクミンとキサントリゾールです。
ヒト乳がん細胞MDA-MB-231を用いて、クルクミンとキサントリゾールを同時に与えると、抗腫瘍作用が相乗的に発揮される(13)。
このことは、クルクミンのみ含むウコンやキサントリゾール含量が少ないクスリウコンでは、乳がん抑制作用が期待できないと結論できる。
文献
1. 上原真一他。 薬学雑誌、112(11)、817~823、1993
2. European Medicines Agency, Committee on Herbal Medicinal Products (HMPC), EMA/HMPC/604598/2012
3. H Itokawa et al.. Chem. Pharm. Bull., 33(8), 3488~3492, 10850et al., J. Math. Fund. Sci, 46(3), 224-234, 2014
4. R Widyowati and M Agil. Chem. Pharm. Bull. 66(5), 506~518, 2018
5. E Kustina et al. International Journal of Science and Healthcare Research. 5(3), 494~500, 2020
6. W Nurcholis et al. Revista Brasiliera de Farmacognosia, 28, 44~49, 2018
7. SF Oon et al. Cancer Cell Int. 15:100, 2015
8. JH Park et al. https://doi.org/10.1002/hlca.201300372
9. V Kanase and F Khan. Asian Journal of Pharmaceutical and Clinical Research. 11(12), 40~45, 2018
10. KE Kook et al. J. Microbiol. Biotecnol. 28(10), 1614-1625, 2018
11. M Yamazaki et al. Chem. Pharm. Bull., 36(6), 2070~2074, 1988
12. W Kiao et al., European Respiratory Journal. 2019 54:PA4206
13.YH Cheah et al. Cancer Cell Int. 9:1, 2009 (published on line on January 2, 2009)
関連人物
関連項目
外部リンク
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